データで見る退職理由の本音と建前

仕事を辞めたいと思ったとき、本当の理由を会社に伝えず、表向きの理由を話す人は多いです。これは、会社と揉めずに辞めたいという気持ちや、変に引き止められたくないという考えからくるものでしょう。僕も退職の相談をされたことは少なくないですが、なかなか本音を話そうとはしてくれないというのは、実感しています。では、実際にはどんな理由でみんな退職しているのでしょうか。
エン・ジャパンが行ったアンケート調査をもとに本音と建前を見てみましょう。
<参照記事>

会社に伝える退職理由(建前)
多くの人が会社に伝える一般的な退職理由次のとおりです。
- キャリアアップのため
- 「より自分に合った仕事がしたい」
- 「スキルを活かせる環境に行きたい」
- 体調不良や家族の都合
- 「健康上の理由で続けられない」
- 「家庭の事情でやむを得ず退職する」
- 会社の方針が合わない
- 「自分の価値観と合わなくなった」
- 「企業文化が変わり、違和感がある」
- 仕事量が多すぎる
- 「労働環境が厳しく、ワークライフバランスが取れない」
- 「仕事の負担が増え、精神的・体力的に厳しい」
- 通勤が大変
- 「勤務地が遠く、移動時間が負担になった」
- 「リモートワークができないため、効率が悪い」
本当の退職理由(本音)
しかし、実際に退職を決意する人の本音の理由を探ると、次のようなことがわかっています。
- 人間関係のトラブル(上司や同僚との問題)
- 「上司のパワハラに耐えられない」
- 「同僚との関係が悪く、ストレスが大きい」
- 給料や待遇に不満がある
- 「業務量と給与が見合っていない」
- 「昇給がほとんどない」
- 長時間労働で疲れた
- 「毎日終電まで働いている」
- 「休日出勤が多く、プライベートの時間がない」
- 仕事にやりがいを感じられない
- 「ルーチン業務ばかりで成長を感じない」
- 「モチベーションが上がらない」
- 会社の雰囲気が合わない
- 「風通しが悪く、意見が言いづらい」
- 「会社の価値観や文化が自分に合わない」
退職時に本当の理由を伝えない背景

退職を決意したとき、多くの人は本音の理由をそのまま伝えることをためらいます。
それはなぜでしょうか?
円満退職を望む心理
退職後も業界内でのつながりがある場合、会社と揉めることを避けたいと考える人が多いです。「立つ鳥あとを濁さず」という言葉のように、できるだけ良い関係のまま退職したいと思うのは、ごく自然なことですよね。
また、退職後に元の会社と仕事で関わる可能性がある場合、本音をぶつけることで後々の人間関係が悪化するリスクもあります。特に、同じ業界で転職する場合、元の会社と取引先やライバル関係になることもあるため、トラブルを避けるために慎重な対応を取る人が多いのもうなずけますね。
会社側の対応への不安
退職を申し出た際に、会社側の反応が予測できないため、本音を伝えるのを避けるケースもあります。
- 引き止めが激しい場合
- 「給料を上げるから残ってほしい」「部署を変えるから考え直してほしい」など、説得されるのが面倒で、あえて無難な理由を選ぶようです。
- 問題がある職場ほど、ずっと人不足が続いているので、引き止めも激しくなる傾向は強いですね。
- 冷遇される可能性がある場合
- 退職を申し出た途端に業務を外されたり、周囲の態度が冷たくなるケースも。
- 最悪の場合、会社が退職願を受理せず、嫌がらせを受けることも。
このような不安があるため、「家庭の事情」「体調不良」など、角が立たない理由を伝えることが多くなります。女性の場合、「介護」を理由にするケースが多くなっているような気がします。
人間関係のしがらみ
退職時には、上司や同僚との人間関係が大きく影響します。
- 上司への気遣い
- 「上司が良くしてくれたのに、退職理由を正直に言うのは申し訳ない」と感じる。
- 職場の同僚への影響
- 「自分が辞めることで、他の同僚に負担がかかるのではないか」と心配する。
- 職場の空気を乱したくない
- 退職理由を正直に伝えることで、職場の雰囲気が悪くなるのを避けるため、無難な理由にする。
会社の評価や推薦に影響する可能性
退職後、新しい職場で働くときに、前職の会社からの評価や推薦が影響することもあります。そのため、ネガティブな理由を言ってしまうと、転職活動に悪影響を与える可能性があります。
特に、次のようなケースでは注意が必要です。
- 転職先が前職の会社と関係している場合
- 取引先や関連会社への転職では、悪い印象を残すと影響が出る可能性がある。
- 退職後にリファレンスチェックが行われる場合
- 転職先の企業が、前職の会社に勤務態度や退職理由を確認することがある。
そのため、退職時には「前向きな理由」を伝え、会社との関係をできるだけ良好に保つことが大切です。
退職時に直面する課題とその解決策

退職を決めたからといって、すぐにすべてがスムーズに進むわけではありません。実際には、退職に伴ってさまざまな課題が発生し、それをどう乗り越えるかが重要になります。ここでは、退職時に直面する代表的な問題と、その解決策を詳しく解説します。
退職を伝えた後の引き止め
退職の意思を会社に伝えると、多くのケースで上司や人事から引き止められることがあります。「給料を上げる」「異動を考える」などの提案をされることもありますが、一度決めた決意を揺るがされると、退職のタイミングがずれたり、精神的に疲れてしまうこともあります。
解決策:
- 退職の意思を固める前に、しっかりと今後のキャリアプランを考えておく。
- 「もう次の職場が決まっている」と明確に伝えると、引き止めを受けにくくなる。
- 不安な場合は、退職代行サービスを利用するのも一つの手段。

2. 有給休暇が消化できない
会社によっては「有給は使わせない」「退職者の有給消化は認めない」といった風潮がある場合があります。しかし、有給休暇は労働者の権利であり、法的にも取得が認められています。
解決策:
- 退職の意思を伝える際に、有給休暇の取得についても同時に話しておく。
- 会社が認めない場合は、労働基準監督署に相談する。
- 退職の1か月以上前から計画的に有給を取得し、退職直前に消化する。
- 不安な場合は、退職代行サービスを利用するのも一つの手段。

3. 退職後の手続きの負担
退職後には、健康保険の切り替え、年金の手続き、失業保険の申請など、さまざまな事務手続きが発生します。これらをスムーズに進めないと、思わぬ不利益を被ることがあります。
解決策:
- 退職前に必要な手続きをリスト化し、スケジュールを立てておく。
- 退職後すぐにハローワークに行き、失業保険の申請をする。
- 転職先が決まっていない場合、国民健康保険や国民年金の手続きを早めに行う。
4. 退職後の人間関係の変化
退職した後も、元の職場の同僚や上司との関係を維持したい人もいれば、完全に縁を切りたい人もいるでしょう。しかし、業界内で転職する場合、前職の関係が影響を与えることもあります。
解決策:
- 円満退職を心がけ、感謝の気持ちを伝えて去る。
- SNSでのつながりをどうするか事前に考えておく。
- 退職後にトラブルが起こらないよう、前職の関係者との適切な距離感を持つ。
退職にはさまざまな問題がつきものですが、しっかり準備をしておけばスムーズに乗り越えることができます。特に、退職代行サービスや転職エージェントを活用することで、負担を減らしながら次のステップへ進むことができます。

退職理由を伝える際の注意点とポイント

退職を決意し、それを会社に伝える際には、慎重に言葉を選ぶ必要があります。適切な伝え方をしないと、不要なトラブルや引き止めに遭うことがあります。ここでは、退職理由を伝える際の重要なポイントについて解説します。
ポジティブな言い方をする
退職理由を伝えるときは、できるだけ前向きな表現を使いましょう。「会社が嫌だから辞める」という否定的な理由ではなく、「新しい環境で挑戦したい」など、キャリアアップにつながるような言い方が望ましいでしょう。
例:
- NG:「上司がひどいので辞めます」
- OK:「より成長できる環境を求めています」
余計なことは言わない
退職理由を細かく話しすぎると、引き止めに遭ったり、無用なトラブルを招く可能性があります。例えば、「給料が低いから辞めたい」と言うと、「昇給を検討するから残ってほしい」と言われることも。退職の意思が固い場合は、あまり詳しく説明せず、「一身上の都合」などシンプルな理由を伝えるのがベストです。
会社に迷惑をかけない伝え方をする
円満退職を目指すなら、会社側への配慮も忘れずに。「辞めるからあとは知らない」という態度ではなく、「お世話になりました」と感謝の気持ちを伝えることが大切です。また、退職のタイミングも考え、業務の引き継ぎ期間を確保すると、スムーズに退職できます。
退職のタイミングを考える
会社の忙しい時期に急に辞めると、職場の雰囲気が悪くなったり、後任の引き継ぎがスムーズに進まなかったりします。できるだけ繁忙期を避け、会社にとっても迷惑が少ないタイミングで退職を申し出ることが理想です。
転職先の情報は慎重に伝える
「次の仕事が決まっているのか?」と質問されることがありますが、競合他社への転職などの場合は慎重に対応する必要があります。転職先の情報を正直に話しすぎると、思わぬ問題が発生することもあるので、「次の環境で新しいことに挑戦します」といった曖昧な表現を使うのも有効です。
退職願・退職届を準備する
正式に退職を申し出る際には、退職願や退職届を提出する必要があります。会社のルールを事前に確認し、適切な形式で書類を準備しましょう。また、直属の上司に口頭で伝えてから正式に書面を提出するのが一般的です。
退職交渉が難航した場合の対処法
会社がなかなか退職を認めてくれない場合や、上司の圧力が強い場合には、退職代行サービスを利用するのも一つの方法です。無理に交渉を続けると、精神的な負担が大きくなることもあるため、第三者の力を借りることでスムーズに退職できます。
退職理由を伝える際には、余計なトラブルを避けつつ、自分の意思をしっかり伝えることが重要です。適切な方法を選び、円満に退職できるよう準備しましょう。
まとめ
退職理由には本音と建前があり、多くの人は会社には本音を言わずに辞めています。その背景には、円満退職を目指したい気持ちや、無用なトラブルを避けたいという心理があるためです。データを見ると、本音では「人間関係」「給料・待遇」「長時間労働」に悩む人が多いことがわかります。
退職をスムーズに進めるためには、ポジティブな言い方をする、具体的すぎない理由を伝えるなど、工夫が必要です。また、退職代行サービスを活用することで、ストレスを減らし、スムーズに退職することも可能です。
退職を考えている人は、慎重に準備し、自分にとって最善の選択をしましょう。

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